前回、35年愛用の包丁が「切れるんだけど切れない」になった話を書きました。
今日はその続きのような、でも少し違う話です。私が包丁を研いでいたのは、自分の台所だけではありませんでした。
カバンに砥石を入れて、自転車で回っていました

15年ほど前、私はケアマネージャーをしていました。自転車で利用者さんのお宅を回る毎日です。
そのカバンの中に、砥石が入っていました。
担当していた地区は、裕福な世帯が多いところではありませんでした。それでも皆さん、それなりに一生懸命に暮らしていました。ヘルパーさんもそれに付き合って、家事支援を頑張ってくれていました。
あの頃の介護保険は、まだ和気あいあいとしていました
15年前は、世話好きのおばちゃんたちがヘルパーの仕事をやっていた時代です。
ヘルパーさんから様子を聞いて、気になれば見に行って、利用者さんも含めてみんなでどうしていこうかと悩んだり、笑ったり、怒ったり。そんな毎日でした。
今はだいぶ機械的になりました。時間で区切られ、仕事は仕事という部分に切り分けられています。それはそれで、仕組みの上ではとても合理的で、必要なことだと思っています。ただ、あの頃はそうではなかった、というだけの話です。
トマトが潰れる包丁
あるとき、ヘルパーさんが「調理に時間がかかる」と訴えてきたことがありました。
ちょっと台所に行って眺めてみたら、包丁が3本も4本もあるのです。それなのに、どれも全然切れない。
トマトが潰れる勢いでした。力を入れて、何とか切っている。これでは時間がかかって当たり前です。
5分研ぐだけで、別の包丁になります

前回の記事では、包丁は研ぎ屋さんに出すのがいい、という結論を書きました。プロに研いでもらったほうが、切れ味の持ちが違うからです。
でも、ここまで切れない包丁だと話は別です。素人の私がちょっと研ぐだけで、ものすごく切れるようになります。
そんなに長くは持たないと思います。それでも、今使っている状態よりは数段切れるレベルになります。切れ味が落ちてきても、まだ元の包丁よりはマシなくらいです。
1本を研ぐのにかかる時間は、私の腕で5分ほど。大抵のものは、それで形になります。
どちらにしろ100円ショップで買ったものや、1,000円ほどで買った包丁です。多少刃こぼれさせても、そんなに罪悪感のない代物でした。だから私も遠慮なく研がせていただきました。もちろん利用者さんも、切れるようになると聞けば快く了承してくださいました。
「わー! あんなに切れるようになるんですね!」
研ぎ終わったあと、ヘルパーさんに一言残して訪問を終えます。
「切れるようになったから、手を切らないように気をつけてね」
その後、事務所に戻って事務処理をしていると、ヘルパーさんが飛び込んできて叫びました。
「わー! あんなに切れるようになるんですね!」
こういうことが、何件かありました。
包丁が切れるだけで、時給が上がります
包丁が切れるようになると、料理の時間がすごく短縮されます。
ヘルパーさんの持ち時間は決まっています。同じ時間でできることが増えるのですから、これだけで時給が上がったのと同じことです。
そして、包丁が切れるというのは、料理がすごく楽しくなることでもあります。ヘルパーさんの仕事も楽しくなります。
包丁が切れるだけで、生活の質——クオリティ・オブ・ライフが上がるのです。
台所を見に行こうと思ったのは、私が管理栄養士のライセンスを持つケアマネージャーだったからだと思います。介護の世界では、その人が持っている強みのことを「ストレングス」と呼びます。あれは私のストレングスだったのかもしれません。
まとめ・自炊は、食費を削る最大の武器です
職場が変わってからは、そんな和やかな時間もなくなりました。時代とともに、もっと殺伐とした介護保険の世界へ移っていきました。
それでも今も思うことがあります。
一人暮らしの高齢者のお家。料理があまり得意ではない方のいるお家。ちょっと包丁を研いであげるだけで、暮らしが変わって、節約にもつながるのになあ、と。
台所に立つのが楽しくなると、やっぱり自炊をしたくなります。そして自炊ができるということは、外で買うものよりずっと安く済むということです。自炊は、食費を削る最大の武器だと思っています。
もし今、切れない包丁を使っているなら。一度研いでみてください。ご自分で研げなくても、研ぎ屋さんに1本出すだけで、台所の景色が変わります。
【書いた人】
のらりくらりゆる〜く生活のストレスを排除しながらプチ節約をして、介護職でもひとりでも20年で住宅ローンを一人で完済。アラ還でFIREに辿り着いたりすねえです。



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